「低速回転の石臼挽き小麦」のパンがおいしいのに希少な理由

石臼

「低速回転の石臼挽き小麦」のパンがおいしいのに希少な理由

パンむぎとしの特徴のひとつに、
「低速回転の石臼による自家製粉」があります。

こだわりのお蕎麦屋さんにはよく使われていますが、
パンの世界ではまったくと言っていいほど普及していません。
それはなぜでしょう?
お客様にとっては何がよいのでしょうか?

一般的なパン作りとくらべて、具体的にどういう違い
があるのか、大きく5つにわけてご紹介します。

石臼による自家製粉は、
1.お客様にとって、どんなメリットがあるのか?
2.いったいどんなことをするのか?
一般的なパン屋さんはなぜやらない?
4.一般に普及している小麦粉はどうなのか?
5.まとめ

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1.お客様にとって、どんなメリットがあるのか?

お客さまにとって、一番気になる点ですね。
ここではメリット4つ+デメリット2つをご紹介します。

メリット① 本当においしい

石臼でゆっくり丁寧に挽かれた小麦は、「熱による酸化」がないため、
粉そのものに、奥深いあじわいがあります

このあじわいは、製粉から時間の経過とともに失われていきます。
自家製粉であれば、すぐに生地に仕込むことができるため、おいしさを
損ねることなくパンにすることができます。

それだけでなく、生地の熟成によっても、さらにおいしさを引きだせる
余地が残っていることも大きな特徴です。
このおかげで、作り手の工夫によっては、
これまでになく深いあじわいのパンを作り、お客様にお召し上がりいただくことができるのです。

メリット② 薫りが良い

メリット①に共通しますが、多くのあじわい成分が残っていますから、
熱が加わった際の変化であるメイラード反応カラメル化現象にも、
好影響をあたえてくれます。

単調ではない、ふくざつで、深い薫りが鼻を抜けると、
食欲も刺激されますね。

メリット③ 安心である

自家製粉するためにパン職人は、
小麦を「玄麦(粒)」で仕入れる必要があります。
現在、市場になかなか流通していない玄麦は、
農家さんから直接仕入れることが多くなります。

粉になる前の「背景」がわからない一般的な小麦粉よりは、
よっぽど安心です。
なぜなら、生産者の顔が見えやすくなり、農法や畑に関心をもったりと、
さまざまなかたちで、作り手が「小麦」の背景を知る機会がふえるからです。

背景を知ると、貴重な食材を「大切にあつかう意識」が芽生えるものです。
そうした作り手は、オーガニック栽培の小麦を選ぶことも多くなります。

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 一方で、小麦を「粉」として仕入れてしまうと、
製粉会社以前の背景がまったく見えずに、
大切にあつかおう、という意識も
芽生えにくいでしょう。

作り手の意識は日々の仕事に積み重なり、
結果、お客様の心とからだに影響をあたえるものなのです。

メリット④ 栄養価が高い

小麦の胚芽、ふすま(外皮)や、ふすまの内側(アリューロン層)には、
ビタミンB1、B2、ビタミンE、リノール酸、リノレン酸、カルシウム、
マグネシウム、オクタコサノール、食物繊維などが豊富です。

これらは、疲労回復、美肌、お通じ、持久力向上老化を防ぐことに役立つ栄養素です。

この栄養素を排除せずに温存して製粉できるのが、石臼とふるいを使用した自家製粉なのです。

デメリット① 安価ではない

低速回転による石臼挽小麦のパンを作るには、
多大な時間と手間が不可欠です。

パン作りにかかる時間以上に、製粉にかかる時間のほうが
長くなります。

こだわりの石臼製粉のお蕎麦屋さんの、そば一杯の価格を思い出してみてください。
粉+水、出汁、薬味。スーパーだと数十円で買えてしまいますが、
お蕎麦屋さんでは、それなりの価格ですね。
おいしいそばを作るためには、それだけ時間と技が必要だということでしょう。

そしてじつは、パン屋に必要な粉の量は、お蕎麦屋さんの比ではないくらいに
多くの量を必要とします。
そのため、低速回転の石臼による自家製粉で作るパンは、時間を惜しんでいてはつくれません。
町のパン屋さんのように、薄利多売方式では継続していけるものではないのです。

小麦を製粉している石臼

デメリット② 希少である

低速回転の石臼挽小麦をつかったパンは、
残念ながらまったく普及していません。

低速回転の石臼が普及しない理由は、デメリット②の安価ではない理由と同じく、
時間と技術の壁があるからです。

粉を見極め、ふるいの網目サイズを決めたり、レシピを調整するには経験が不可欠です。
時間を惜しまずに、パン作りの本質を追求する意志も必要です。

短時間でたくさん製粉できる、ヨーロッパ製の石臼製粉機を導入している店舗は、全国に少し存在します。
しかし、ヨーロッパ製の製粉機は見た目はかっこよく、趣を感じさせますが、
高速回転の摩擦熱により、粉の温度が50℃以上にまで上昇してしまいます。
粉は高温にさらされると、瞬く間に酸化してしまうため、
残念ながら「本当に小麦のおいしさを引きだすこと」には適していません。

したがって、低速回転の石臼挽小麦をつかったパンは、非常に希少なのです。

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2.「石臼による自家製粉」とはどんなこと?

石臼とは、こだわりのお蕎麦屋さんがつかう、上下にわかれた丸い臼のことです。
田舎の民家の納屋には、いまでも手回しの石臼が眠っているのではないでしょうか。

石臼には手回しのものや、電動のもの、高速回転、低速回転とさまざまなものがありますが、
当店では、小麦のおいしさを最大限に引き出すために、
摩擦熱を最低限におさえられる、低速回転の電動石臼で小麦を挽いています。

製粉作業を簡単に説明しますと、以下のようになります。

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順序①石臼製粉

1日営業日に必要な分量の小麦を挽くのに、10~12時間
低速の石臼でゆっくりゆっくり、温度が上がらないように挽きます。

製粉量を増やそうとして臼への投入量を多くすると、上臼がもちあがってしまい、
粗挽きの粒にしか挽けません。
それではパン作りにはつかえなくなってしまいます。
あくまで、ゆっくり少しづつがベストな製粉なのです。

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順序②ふるいがけ

石臼で挽いた小麦には、粗い粒や大きなフスマ(外皮)もふくまれるため、
そのままではパン作りにはつかえません。

「ふるい網」をつかって「粗い粉」「細かい粉」にふるいわけます。

外皮と胚乳のあいだにある、栄養価の高い「アリューロン層」といわれる部分も
しっかり含まれるように、独自の網目サイズを特注しています。

挽きたての小麦粉から取り除かれた粗いふすま

順序③再度石臼挽き・ふるいがけ

ふるいにかけた粉のうち、粗いものは再度石臼で挽き、さらにふるい落とす作業を繰り返します。
ふるいの網は粉のキメを整え、胚芽ふすま(栄養・食物繊維)の量をきめる、大切な道具。
当店では既存の網ではなく、独自のサイズの網を特注しています。

このように石臼製粉後の調整作業にも手間と時間がかかるものです。
パンむぎとしでは、小麦製粉作業に週のうち、3日をかけています。
実店舗営業が週2日ですから、製粉作業だけで営業日以上の時間をかけていることになります。

 

3.一般的なパン屋さんはなぜやらない?

低速回転の石臼による自家製粉。

これに対して、一般的なパン屋さんは食材業者から届いた
小麦粉の袋を開けるところからはじまります。
一般的なパン屋さんの仕事には、そもそも製粉作業はありません。

集客のために石臼を展示している店はあれど、
実際に製粉した小麦を使用するパンは全体のごくごく一部です。

ほとんどのパンを製粉会社の小麦粉でまかなっているものなのです。

何故でしょう?

パンむぎとしでは営業日を週2日にまでしぼっています。
それでも製粉は3日かかります。

一般的なパン屋さんは週5日以上は営業がふつうです。

低速回転の石臼とふるいで丁寧に自家製粉しようとすると、
単純に換算して7日から8日はかかる計算になります。

利益や経費をかんがえると、個人の技術や時間など、
「生産性」の悪いことはどんどん省略されるものです。

大きな設備や高速回転の石臼製粉機を導入するか、
人件費をかけることで自家製粉は可能かもしれません。

ただ、収穫ごとに小麦の品質は変わり、挽きたての粉も刻々と変化しますから、
変化に対応できるだけの経験と技術がなくては生地が大きくブレてしまいます。

日々、数十キロ、数百キロの生地を仕込む、一般的なパン屋さんにはなかなか難しいでしょう。

「やらない」というよりは、かるい気持ちでは、手をだせない」のです。

小麦の若葉たち

4.一般に普及している小麦粉はどうなのか?

ここまでは石臼挽きによる自家製粉についてご紹介してきました。
キーワードは低温で製粉・製粉後すぐに使用できる・おいしい・栄養価が高いということでした。

これには、手間暇・時間・技術・安価ではない・希少という、むつかしさもありました。  


では、一般的に普及している、製粉会社の小麦粉についてはどうでしょうか?

製粉会社の商品にも一部、石臼挽き小麦粉は存在します。
外皮(食物繊維)や胚芽なども、ある程度残されています。
ただおいしいかというと、残念ながらそうとはいいがたいものです。

なぜなら、「おいしい成分」「時間と熱」によって、
「雑味成分に変化する(酸化)」からです。
仮に低温で石臼製粉されていたとしても、
その後の流通で時間をかけてしまうと酸化がすすみます。

皮をむいたリンゴやバナナを思い出していただくとわかりやすいですね。
そのままでは、油臭さや苦み・えぐみが際立ちますから、
長期保管が必要となる流通には、なかなかのせられません。

雑味の出る部分(本当はおいしい部分)を排除した、精白粉が主力になってしまうのもうなずけます。

結果、小麦は個性を失い、グルテンやデンプンの物理性でしか、
違いをだせなくなってしまうのです。

これらの理由でやはり、製粉後すぐに使用できる「自家製粉」であることが理想です。

挽きたての小麦粉

もう一つの問題は、残留農薬の心配です。

先日、国内大手3社の製粉会社の外国産小麦から、グリホサートが検出された
というニュースが流れました。
グリホサートは、WHOの専門機関によって、
発がん性が認められた除草剤の成分です。

日本の小麦生産量は少ないため、90%を
アメリカ・カナダ・オーストラリアからの輸入に頼っています。

農林水産省の調査でもアメリカ・カナダの小麦の、
90%からグリホサートが検出されたとの報告があり、非常に心配なニュースです。

小麦若葉が生い茂った畑

5.まとめ

低速回転の石臼で挽いた小麦を使用したパンが、なぜおいしくて価値があるのに、希少なのかおわかりいただけたでしょうか?

パンを多品種・大量に製造する一般のパン屋さんにとっては、
製粉会社の作る小麦粉は必要不可欠でしょう。
近年ブームになっている高級食パンの生産にも、年中一定の物理性が保たれている、
大量生産の小麦粉なくしては成立しません。

パン屋は製粉会社のうたい文句を、消費者はパン屋のうたい文句を基準に選択するしかないですよね。

製粉会社の主な小麦製品は、おいしさ以前に、どこで、どんな栽培をされ、
何をどれだけまぜたのかが消費者に見えづらいことも問題です。

私たちがこれらの不安要素を回避するためには最低限、国内産小麦を選ぶことですが、
それだけでは足りません。
やはり、オーガニック栽培・有機栽培のものが安心です。

安価なものに惑わされず、志をもって生産されたものを積極的に選択をしていくことで、
安心しておいしいパンを愉しんでいただければ幸いです。

今後は、利益やトレンドだけでなく、本質を大切にする、
そして、低速回転の石臼で製粉する、本当のこだわりをもったパン職人が増えてくることを期待したいですね。

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