揚げパンが出ない地域があるのはなぜ?給食事情の違いや懐かしの味を楽しむ方法

給食の王様ともいえる揚げパンですが、実は全国一律のメニューではなく「一度も出たことがない」という地域が一定数存在します。世代や地域によってこれほど知名度に差があるメニューも珍しくありません。なぜ地域差が生まれるのか、その意外な理由と、自宅で懐かしの味を楽しむ方法を詳しくご紹介します。

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揚げパンが給食に出ない地域があるのはなぜ?

揚げパンは1950年代に東京都大田区の小学校で、欠席した児童に栄養のあるパンを届けるために考案されたのが始まりとされています。そこから全国に広がりましたが、すべての自治体が採用したわけではありません。給食の献立は各自治体の教育委員会や調理現場の判断に委ねられているため、地域の事情が色濃く反映されます。

給食にパン自体が少ない地域だと揚げパンも出にくい

揚げパンが出るか出ないかの大前提として、その地域の給食における「パン食の頻度」が大きく関わっています。日本政府が推進する「米飯給食(ごはん中心の献立)」の普及により、近年は週に4〜5回をごはんに設定している地域が増えました。特に米どころとして知られる北陸地方や東北地方の一部、また食育に力を入れている自治体では、パンが出る回数が月に1〜2回程度ということも珍しくありません。

パン自体の登場回数が少ないと、必然的に揚げパンのような特殊な調理を必要とするメニューが組み込まれるチャンスも減ります。また、ごはん中心の文化が根強い地域では、給食の献立も「和食」がベースとなるため、デザートに近い立ち位置の揚げパンは献立のバランス上、選ばれにくい傾向にあります。一方で、かつてパン給食が主流だった都市部や、パン食の文化が根付いている地域では、今もなお不動のレギュラーメニューとして親しまれています。

調理設備や油の管理ルールで提供が難しいことがある

揚げパンを作るためには、大量のコッペパンを短時間で揚げ、熱いうちに砂糖やきな粉をまぶすという非常に手間のかかる工程が必要です。これを数千人分規模で行うには、強力なフライヤー(揚げ物機)と、作業スペースの確保が不可欠です。しかし、古い調理施設やスペースの限られた調理場では、パンを揚げるための専用ラインを確保することが物理的に難しい場合があります。

また「油の管理」も大きな壁になります。揚げパンを作ると、油にきな粉や砂糖が混ざり、油の劣化が急激に進んでしまいます。給食調理場では、一度使った油を再利用する回数や、廃棄に関する厳しい衛生管理ルールが設けられています。揚げパンのために大量の油を一度で使い切ってしまうことは、コスト面や環境負荷の観点から敬遠されることがあるのです。こうした「現場の運用ルール」によって、揚げパンが幻のメニューとなっている地域は意外と多く存在します。

栄養基準やアレルギー配慮でメニューから外れる場合もある

学校給食には、文部科学省が定める「学校給食実施基準」という栄養摂取のガイドラインがあります。揚げパンはパンを油で揚げ、さらに砂糖をたっぷりとまぶすため、一般的なパンに比べて脂質とカロリーが格段に高くなります。限られたカロリー枠の中で、他の副菜や牛乳とのバランスを考えた際、揚げパンを採用すると栄養基準をクリアするのが難しくなるケースがあります。

さらに、近年のアレルギー配慮も影響しています。揚げパンの定番である「きな粉」は大豆アレルギーの対象です。また、調理工程で油が飛び散ったり、粉が舞ったりしやすいため、重度のアレルギー児童がいる学校ではリスクを避けるためにメニューから外されることがあります。健康意識の高まりや安全性の追求といった時代の変化が、かつての人気メニューを献立から遠ざける一因となっている側面は否定できません。

同じ県内でも学校・年代で経験が分かれることが多い

「自分の県では揚げパンが出た」と思っていても、隣の市の友人は「見たこともない」と言うことがあります。これは、給食の運営主体が都道府県単位ではなく、市区町村単位であるためです。また、同じ市内であっても、その学校が「自校調理(自分の学校で作る)」か「センター方式(調理場から配送)」かによって、メニューが異なる場合が多々あります。

年代による違いも顕著です。かつては定番だった地域でも、調理場の建て替えを機にメニューが廃止されたり、逆に「懐かしのメニュー」として数年前から復活したりする事例もあります。このように、揚げパンの経験は非常に個人的な環境に左右されます。地域差だけでなく、いつ、どこの学校に通っていたかというタイミングが、揚げパンの思い出を分ける境界線になっているのです。

揚げパン気分を楽しめるお取り寄せ・再現アイテム

揚げパンが給食に出なかった地域の方も、かつての味が恋しい方も、最近は便利なアイテムを使って自宅で手軽に再現できます。おすすめのアイテムをいくつかご紹介します。

商品・アイテム名特徴公式サイトURL
冷凍あげぱん(オカゲヤマ)解凍するだけで本物の給食の味が楽しめる冷凍タイプ。給食パンのオカゲヤマ
ソントン シュガートースト きなこ揚げパン風味食パンに塗って焼くだけで、揚げパンの香ばしさを再現できるクリーム。ソントン株式会社
揚げパン用きなこ(ハウス食品など)揚げたてのパンにまぶすだけで味が決まる、専用のミックス粉。ハウス食品公式サイト
パスコ ロングライフ コッペパン賞味期限が長く、自宅での揚げパン調理に最適なプレーンパン。Pasco(敷島製パン)
富士ホーロー ミルクパン少ない油で揚げ焼きにするのにちょうど良いサイズの小鍋。富士ホーロー公式サイト
無印良品 シリコーン調理用トング熱に強く、滑りやすい揚げパンもしっかり掴める万能トング。無印良品オンラインストア

揚げパンが出る・出ないの違いは何で決まる?

揚げパンが提供されるかどうかを決定づける要因は、単なる「人気」だけではありません。その背後には、給食運営の仕組みや、地元の産業との繋がりといった、複雑な事情が絡み合っています。なぜ自分の学校にはあったのか、あるいはなかったのか、その分岐点をさらに詳しく紐解いてみましょう。

共同調理場か自校調理かでメニューの幅が変わる

給食の調理形態には大きく分けて、学校内に調理室がある「自校調理(自校方式)」と、巨大な工場で作って各校へ配送する「共同調理場(センター方式)」があります。揚げパンに関しては、圧倒的に自校調理の方が提供しやすいメニューです。自校調理であれば、揚げてから教室に届くまでの時間が短いため、揚げパンの命である「サクサク感」を保ったまま提供できます。

一方、センター方式では、調理から配送、そして実際に子供たちが食べるまでに数時間のタイムラグが発生します。揚げパンは時間が経つと油が回り、ベタついて食感が損なわれやすいため、衛生管理や品質維持の観点からセンターでは敬遠される傾向があります。特に大規模なセンターであればあるほど、揚げ物の工程は機械化しにくく、人手が必要な揚げパンはハードルが高いメニューとなります。

揚げ物の回数制限や油の交換ルールが影響する

給食管理においては「揚げ物の回数」が月に数回までと制限されている自治体があります。これは子供たちの健康管理だけでなく、油の廃棄量を抑える環境保護の目的もあります。もし月に2回しか揚げ物ができないルールだとしたら、メインおかずの「鶏の唐揚げ」や「エビフライ」が優先され、主食であるパンを揚げる余裕がなくなってしまいます。

また、パンを揚げると細かいパン粉や糖分が油の中に大量に溶け出します。これにより、次に他のおかずを揚げる際に焦げやすくなったり、風味が移ったりするため、揚げパンを作った後は油を全交換しなければならない場合が多いのです。この「油のコスト」と「交換の手間」が、現場の栄養士さんや調理員さんにとって大きな負担となり、メニュー採用を左右する決定打になることがあります。

地元のパン業者や献立文化で定番が変わる

学校給食のパンは、その地域の製パン組合や指定された地元のパン工場が納入しています。揚げパンにするためには、油を吸いすぎない適度な密度のコッペパンが理想的ですが、全ての業者がそのような仕様のパンを製造しているわけではありません。業者との契約内容や、納入されるパンの形状によっては、揚げパンへの加工に向かないこともあります。

さらに、地域の食文化も色濃く反映されます。例えば、愛知県の一部では「小倉トースト」に近いメニューが親しまれていたり、特定の地域では揚げパンの代わりに「揚げ出し豆腐」が不動の人気を誇っていたりと、地域ごとに大切にされている「定番」があります。その地域で揚げパンが根付かなかったのは、他に魅力的なご当地メニューがすでに君臨していたから、という理由もあるかもしれません。

「懐かしい給食」の流行で復活するケースもある

近年、SNSやメディアで「懐かしの給食メニュー」として揚げパンが頻繁に取り上げられるようになりました。これを受けて、かつて揚げパン文化がなかった地域の教育委員会が、イベント給食や「リクエスト給食」として期間限定で採用するケースが増えています。一度食べてその美味しさを知った子供たちが「また食べたい!」と熱望することで、新しい定番として定着することもあります。

また、道の駅やサービスエリア、あるいはレトロな雰囲気を売りにしたベーカリーなどで「給食風揚げパン」が販売されるようになり、学校の外からブームが再燃する現象も見られます。かつて地域差によって分断されていた揚げパンの経験が、こうした商業的な広がりによって、今まさに「全世代共通の思い出」へと書き換えられようとしているのかもしれません。

揚げパンの地域差は給食の背景を知るともっと面白い

揚げパンが出る地域と出ない地域の違いを調べていくと、そこには調理施設の構造から栄養基準、さらには地域の農産物へのこだわりまで、さまざまなドラマがあることがわかります。もしあなたが揚げパンの出ない地域で育ったとしても、それは決して「ハズレ」ではなく、代わりにその土地ならではの美味しい給食を味わってきた証でもあります。

今ではお取り寄せや再現クリームなど、自宅で簡単にあの味を再現できるツールが揃っています。出た地域の人も、出なかった地域の人も、きな粉の香りに包まれながら「自分の街の給食」に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。揚げパンという一つのメニューを通じて見える地域の多様性は、パン文化の奥深さを教えてくれる、とても興味深いテーマです。“`

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この記事を書いた人

パンの香りって、それだけで一日がちょっと良くなる気がして大好きです。ふわふわの食パンも、噛むほど甘い麦パンも、土地ごとのパン文化も、知れば知るほど奥が深いのが楽しいところ。地域のパンや各地のベーカリー、朝食の豆知識などパンの世界をまるごと楽しめる情報を発信します。

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