フーガスとフォカッチャの違いは?見た目と食感の魅力を紹介

オリーブオイルの香りが食欲をそそるフーガスとフォカッチャ。どちらも似た材料で作られるパンですが、その見た目や食感にははっきりとした違いがあります。フランスとイタリア、それぞれの国で愛されてきたパンの魅力を紐解きながら、作り分けのポイントやおすすめの道具をご紹介します。

目次

フーガスとフォカッチャの違いが分かるのは見た目と食感の方向性

フーガスとフォカッチャは、どちらも平たく焼き上げる「フラットブレッド」の仲間です。しかし、フーガスは南フランスのプロヴァンス地方、フォカッチャはイタリアのジェノヴァを中心としたリグーリア地方が発祥という歴史的な違いがあります。このルーツの違いが、焼き上がりの形や口当たり、そして食卓での役割に大きく影響を与えています。

フーガスは切れ込みのある薄焼きで香ばしく仕上がりやすい

フーガスは、ラテン語で「焦げ」や「灰」を意味する言葉が語源とされています。かつてパン職人がオーブンの温度を確かめるために、少量の生地を薄く伸ばして焼いたのが始まりと言われています。その最大の特徴は、木の葉や麦の穂を模した大きな切れ込みです。生地を薄く伸ばしてからスケッパーやナイフで大胆に穴を開けるように切り込みを入れ、その穴を左右に広げて焼き上げます。

このように形を整えることで表面積が非常に大きくなり、オーブンの熱が生地全体に素早く伝わります。その結果、どこを食べても「カリッ」「サクッ」とした香ばしい食感が生まれます。パンというよりも、クラッカーや焼き菓子に近い軽やかさが魅力です。おつまみやおやつとして親しまれており、生地の中にオリーブやドライトマト、ベーコン、チーズなどを練り込んで、具材の旨味と生地の香ばしさを一緒に楽しむスタイルが一般的です。

見た目のインパクトも強いため、パーティーやおもてなしの席でも重宝されます。しっかりとした噛み応えがあるため、噛むほどに小麦の風味が口いっぱいに広がります。薄く焼き上げるため、冷めても食感が損なわれにくく、ディップソースなどを添えて食べるのにも適しています。フランスの豊かな食文化を感じさせる、非常に表情豊かなパンと言えます。

フォカッチャは厚みが出やすくふんわり感を楽しみやすい

イタリアを代表するパンの一つであるフォカッチャは、ピザの原型とも言われています。フーガスとは対照的に、ある程度の厚みを持たせて焼き上げるのが特徴です。天板いっぱいに生地を広げ、指先で表面にポコポコと深いくぼみを作る姿はおなじみの光景です。このくぼみがあることで、焼き上がりの表面に変化が生まれ、オリーブオイルが程よく溜まってしっとりと仕上がります。

食感の方向性は「ふんわり、しっとり」です。生地にたっぷりの水分とオリーブオイルを含ませるため、内部はキメが細かく、まるでお餅のような弾力のある口当たりになります。厚みがある分、食事パンとしての満足感が高く、メイン料理のソースを拭って食べたり、横に切り込みを入れてサンドイッチ(パニーノ)にしたりと、幅広い楽しみ方ができます。

表面には岩塩やローズマリーを散らすのが伝統的なスタイルですが、ジャガイモを練り込んだり、トマトやオリーブを埋め込んだりと、バリエーションも豊富です。焼き上がりの表面はオリーブオイルで少し揚げたようなカリッとした質感になり、中は蒸し焼きにされたようなモチモチ感を楽しむことができます。イタリアの家庭料理には欠かせない、温かみのある優しい味わいのパンです。

油脂の使い方で口当たりが大きく変わる

フーガスとフォカッチャの最大の違いの一つは、オリーブオイルの使い方にあります。フーガスの場合、オリーブオイルは生地の中に練り込むか、焼成前に表面に薄く塗る程度に留めることが多いです。これは、生地自体の水分を飛ばして乾燥させ、クリスピーな食感を強調するためです。油脂が多すぎると重くなってしまい、フーガス特有の軽快な歯ざわりが失われてしまいます。

一方、フォカッチャにおいてオリーブオイルは主役級の役割を果たします。生地の中に入れるのはもちろん、成形時や焼き上がった直後にも驚くほどたっぷりのオイルを回しかけます。表面に開けた無数のくぼみは、このオイルを生地の奥まで浸透させるための貯蔵庫のような役割をしています。オイルが生地に染み込むことで、独特のしっとり感と、噛んだ時にじゅわっと広がる香りが生まれます。

この油脂の使い方の差が、そのまま「サクサク」と「しっとり」の差に直結しています。フーガスは小麦の香ばしさを引き立てるために油を控えめに使い、フォカッチャはオリーブオイル自体の風味と潤いを楽しむために贅沢に使用します。どちらもオリーブオイルの香りがポイントになりますが、そのアプローチは全く正反対である点が非常に興味深いところです。

同じ生地でも成形で印象が変わりやすい

実は、フーガスとフォカッチャは、基本的なパン生地の配合自体は非常に似ています。強力粉、水、塩、イースト、そして少しのオリーブオイルがあれば、どちらのパンも作ることが可能です。つまり、一つの生地から成形方法を変えるだけで、全く異なる二種類のパンを焼き分けることができるのです。

例えば、多めに仕込んだ生地の半分は薄く伸ばして切れ込みを入れ、フーガスとして焼き上げます。残りの半分は厚みを持たせて天板に敷き詰め、指でくぼみを作ってフォカッチャにします。フーガスは高温で短時間焼くことで水分を一気に飛ばし、フォカッチャは適切な温度でじっくり焼くことで内部に水分を閉じ込めます。

成形という最後の手仕事だけで、食卓の主役(フォカッチャ)にも、お酒のお供(フーガス)にも姿を変えることができます。これは家庭でのパン作りにおいて非常に便利なポイントです。その日のメニューや家族の好みに合わせて、成形を工夫するだけで食卓に変化をつけることができます。形が持つ役割と、それが食感に与える影響を理解すると、パン作りがもっと自由で楽しいものに変わります。

フーガスとフォカッチャ作りが楽しくなるおすすめ7選

美味しいフーガスやフォカッチャを作るためには、質の高いオイルと便利な道具を揃えるのが近道です。

エキストラバージンオリーブオイル(香りの良いタイプ)

パンの味を左右する最も重要な材料です。加熱しても香りが飛びにくい、フレッシュで上質なオイルを選びましょう。

項目内容
特徴フルーティーな香りと微かな辛みが生地を引き立てる
推奨品ボスコ(BOSCO)エキストラバージンオリーブオイル
使い方フォカッチャのくぼみにたっぷりと注ぐ
公式サイト日清オイリオグループ公式

マルドン シーソルト(フレーク状の塩)

世界中のシェフに愛される英国産の塩です。ピラミッド型の美しい結晶が、パンの表面に心地よい食感とまろやかな塩気を添えます。

項目内容
特徴結晶が大きく、トッピングしても溶けにくい
メリット噛んだ瞬間に塩の旨味が弾ける
推奨品マルドン シーソルト
公式サイトMaldon Salt(英語)

乾燥ローズマリー(トッピングの定番)

フォカッチャには欠かせないハーブです。オリーブオイルとの相性が抜群で、焼き上がりの香りを一気に本格的にしてくれます。

項目内容
特徴清涼感のある強い香りが特徴
使い方焼成前にオリーブオイルと一緒に散らす
公式サイトS&B食品公式

ベーキングトレー(平らに焼けて扱いやすい)

生地を天板いっぱいに広げるフォカッチャ作りには、熱伝導の良い専用のトレーがあると便利です。焼きムラを防ぎ、底まで均一に熱を通します。

項目内容
特徴四角い形状で端まで生地を伸ばしやすい
推奨品浅井商店 銅の天板シリーズ
公式サイト浅井商店公式オンラインショップ

パンマット(成形と移動がスムーズになりやすい)

フーガスの成形など、生地を扱う際に役立つ帆布のマットです。余分な水分を吸い取り、生地がベタつくのを防いでくれます。

項目内容
特徴厚手のキャンバス生地で耐久性が高い
メリット成形したフーガスを崩さずに移動できる
公式サイトcotta(コッタ)公式

クープナイフ(フーガスの切れ込みが入れやすい)

鋭い刃を持つ専用ナイフです。フーガスの独特なラインや切れ込みを、生地を潰さずにスッと入れることができます。

項目内容
特徴刃先が細く、繊細なデザインが可能
推奨品貝印(KAI)クープナイフ
公式サイト貝印公式オンラインストア

スケッパー(生地を切る・まとめるのに便利)

生地の分割や成形、作業台の掃除までこなす必須アイテムです。フーガスの穴を大きく広げる際にも役立ちます。

項目内容
特徴適度なしなりがあり、手に馴染む形状
推奨品富澤商店(TOMIZ)オリジナルスケッパー
公式サイト富澤商店公式サイト

違いを楽しむ作り方とアレンジの方向性

基本の生地は同じでも、水分量や成形工程に少しのこだわりを加えるだけで、フーガスとフォカッチャの個性はより鮮明になります。それぞれの良さを引き出すための、具体的な調整方法とアレンジのコツを解説します。

水分量はフォカッチャが高めになりやすい

フォカッチャの魅力である「もっちり感」を出すためには、生地の水分量(加水率)を高く設定するのが一般的です。粉の量に対して80%から90%ほどの水を入れることもあります。生地が非常に柔らかいため、扱いには慣れが必要ですが、その分焼き上がりは驚くほど瑞々しく仕上がります。高加水の生地を、オリーブオイルを敷いたトレーに流し込むようにして広げるのが、イタリアの本格的な作り方です。

一方、フーガスの場合は、加水率を70%程度に抑えるのが作りやすさのポイントです。あまりに水分が多いと、せっかく入れた切れ込みが発酵や焼成の過程で閉じてしまい、独特の形が崩れてしまうからです。また、水分を少し控えることで、焼き上がりの「カリッ」としたクリスピーな食感をより強調することができます。生地の硬さをコントロールすることで、理想のスタイルに近づけることができます。

もちろん、一つの生地をベースにする場合は、中間的な加水率(75%程度)で仕込み、成形時に手にかけるオイルや粉の量を調整することで、両方のパンをバランスよく仕上げることが可能です。水分量は食感の設計図のようなものです。自分の理想とする噛み応えに合わせて、水の量を微調整してみましょう。

フーガスは焼き色重視で軽い食感に寄せやすい

フーガスを美味しく焼くコツは、何といっても「焼き色」と「薄さ」です。生地を伸ばす際は、中心部だけでなく端の方まで均一に薄くなるように意識します。厚い部分が残ってしまうと、そこだけパンのようにふかふかしてしまい、フーガスらしい軽快さが失われてしまいます。均一な薄さが、全体に均一な香ばしさをもたらします。

オーブンの設定温度も、普段のパン作りより少し高めの220度から230度程度にするのがおすすめです。高温で一気に焼き上げることで、生地の中の水分が瞬時に蒸発し、表面がキツネ色に色づきます。焼き上がったフーガスを叩いた時に「コンコン」と乾いた音がするのが、成功のサインです。

より軽い食感に寄せたい場合は、生地に練り込む油脂をオリーブオイルではなく、少しのラードやバターに変えるアレンジもありますが、基本は良質なオリーブオイルを使い、焼き加減で勝負するのが王道です。しっかりと焼き色のついたフーガスは、香ばしさが最高の調味料になります。

フォカッチャは指でくぼみを作ってオイルを留めやすい

フォカッチャの成形で最も楽しい工程が、指先での穴開けです。これは単なる飾りではなく、生地の膨らみを適度に抑え、オリーブオイルや塩を留めるための非常に機能的なデザインです。指を立てて、生地の底に触れるくらい深くしっかりと押し込むのがコツです。中途半端な深さだと、発酵の力で穴が埋まってしまい、焼き上がりの表面が平らになってしまいます。

このくぼみに、オリーブオイルと少量の水を混ぜたエマルジョン(乳化液)を流し込む手法もプロの間でよく使われます。水と油を混ぜてかけることで、焼き上がりの表面が乾燥しすぎず、よりしっとり、もっちりとした質感になります。また、くぼみにローズマリーやオリーブの実、ミニトマトをグッと押し込むことで、具材の旨味が生地の中に閉じ込められます。

穴を開けるタイミングは、二次発酵が完了して焼く直前がベストです。ふっくらと膨らんだ生地のガスを適度に行き渡らせながら、オイルをたっぷり纏わせる。このひと手間が、家庭のフォカッチャをレストランのような一皿に変えてくれます。

具材はチーズやオリーブで相性が出やすい

トッピングや練り込む具材によって、フーガスとフォカッチャの表情は無限に広がります。フーガスにおすすめなのは、旨味が強く、焼くことでカリカリになる食材です。細かく切ったベーコン、黒オリーブ、チェダーチーズなどを生地に混ぜ込んでおくと、切れ込みから具材が顔を出し、香ばしく焼き上がります。表面に粉チーズをたっぷり振って焼くのも、おつまみとして最高のアレンジです。

フォカッチャには、ジューシーな具材や香りの強いハーブがよく合います。定番のローズマリーはもちろん、岩塩を大粒のものに変えるだけで贅沢な味わいになります。また、玉ねぎのスライスをたっぷり乗せて焼く「ジェノバ風」や、ジャガイモを薄切りにして敷き詰めるアレンジも人気です。フォカッチャの厚みのある生地が、具材から出るエキスをしっかりと受け止めてくれます。

どちらのパンも、基本はシンプルだからこそ、季節の食材を取り入れやすいのが魅力です。夏はトマト、冬はチーズや根菜など、その時の気分で具材を選んでみましょう。共通して言えるのは、オリーブオイルとの相性が良いものを選ぶことが、失敗しないアレンジの法則であるということです。

フーガスとフォカッチャの違いを楽しむまとめ

フーガスとフォカッチャの違いは、一言で言えば「香ばしさを追求した薄焼き」と「しっとり感を追求した厚焼き」の差です。フランスのフーガスは、その独特な形でどこを食べてもカリッとした食感が楽しめ、イタリアのフォカッチャは、厚みのある生地がオリーブオイルの旨味をたっぷり吸い込みます。

同じ材料から出発しても、成形の仕方やくぼみの作り方、そしてオイルの使い分け一つで、全く異なる世界観を持つパンが焼き上がります。どちらも家庭で比較的挑戦しやすいパンですので、まずは基本の生地を作ってみて、成形でその違いを体感してみてください。

お気に入りのオリーブオイルと岩塩を用意して、焼き立ての香りに包まれる豊かな時間を過ごしましょう。形と食感の関係を知ることで、あなたのパン作りはより深く、より楽しいものになるはずです。

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この記事を書いた人

パンの香りって、それだけで一日がちょっと良くなる気がして大好きです。ふわふわの食パンも、噛むほど甘い麦パンも、土地ごとのパン文化も、知れば知るほど奥が深いのが楽しいところ。地域のパンや各地のベーカリー、朝食の豆知識などパンの世界をまるごと楽しめる情報を発信します。

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